――沈みゆく世界で、君を見つけた。
テレビアニメ化でも話題になったATRI -My Dear Moments-のレビューと感想です。ネタバレは極力避けました。急ぐ方は総評まで飛んでもらって構いません。
なお、作品名とヒロインの名称が同じなので、前者はATRI、後者はアトリとします。
結論、アトリが好きならやれ。
アニメを見て、アトリが好きになった人はプレイする価値が十分にあると思います。
アニメでは伝えきれなかったアトリの魅力が十二分に凝縮されています。それに、イラストも美麗でもっとアトリのことを好きになること間違いなし。
ただし、ガチガチの恋愛物がやりたい方には向かないかもしれません。
アトリと主人公、そして同級生を中心に穏やかな滅びへ向かう世界で未来を掴むお話です。
※やや批判的な感想が目立ちます。ご注意ください。
あらすじ
舞台は原因不明の海面上昇で地表の多くが海に沈んだ近未来。
主人公、斑鳩夏生は「アカデミー」と呼ばれる機関で人類を救う方法を探していたが、幼い頃事故で母と片足を失ったトラウマもあり挫折、海辺の田舎町へ移り住んだ。
身寄りのない彼に残されたのは、祖母の遺した船と潜水艦、そして借金。
祖母の遺産をサルベージしに海底に潜る折、一人の少女と出会う。
少女の名はアトリ。
人間と見間違えるほど、精巧にできたアンドロイドであった。
アトリとの出会いを機に、主人公の止まっていた時が動き出す――
レビュー・感想
アニメと比較して
アニメが完結する前に執筆しているので、詳細には書けませんが参考までに。
私個人の評価としてはゲームのほうがいいです。
そもそもノベルゲームをアニメ化するのは難しいです。いくつもの分岐ルートを攻略したうえでトゥルーエンドにいくからこそ、トゥルーエンドが輝くと思っているので。
とはいえ、アニオリ展開の追加によってノベルゲーとは別物前提でアニメ化を成功させた例もあります。
それも踏まえると、アトリのアニメは、最大の魅力であるアトリのかわいさと主人公の友人である野島竜司のかっこよさが十分に表現できていなかったように思われます。
特に竜司に関しては、アニメだけをみるとただの嫌な奴。
竜司をはじめとした同級生の魅力あってのATRIという作品だと思っているので、それが大幅に削られてしまっているアニメ版は正直なところ高い評価はできません。
だからこそ、少しでも興味を持ってくれた方には、ぜひゲームをプレイいていただきたく思います。
恋愛よりも主人公の成長と人類の未来がテーマ
はじめこそ「ちょっとドジなアトリと堅物の主人公の日常」という感じでしたが、だんだんと「事故という過去のトラウマを克服し、前を向いて人類とともに未来を掴もうとする主人公の成長」という話に変化していったように思われます。
「アンドロイドと人間の恋愛」というものに共感できなかったという個人的な理由もありますが、「恋愛ADV」としてみるよりは、「SF・友情ドラマ」としてみるのが適当かと思います。
アトリがとにかくかわいい
当たり前ですが、アトリがかわいいです。
というか、ギャルゲー全般に言えることなのですが、余程のシナリオゲーでもない限り、キャラをかわいいと思えないゲームはプレイしないのが妥当と考えます。
特に、本作のようにヒロインが一名であるゲームは、そのヒロインと対話する時間が長いため、ヒロインの評価が作品全体の評価に支配的な影響を及ぼしかねません。
裏を返せば、ヒロインを好きであるだけで楽しめるということです。
アニメを視聴して、アトリをかわいいと思ったのであれば迷わずプレイすべきです。
AIは恋をするのか
先ほど、「ATRIは恋愛ADVではない」といいましたが、もちろん恋愛描写もあります。というか普通に多い。
とはいえ、アンドロイド対人間 ということもあり、所謂主人公とヒロインの恋模様を追究するシナリオというより、「AIは恋をするのか」というやや哲学的内容に焦点を当てたシナリオがメインだったと感じます。
AIの参画がすすむ現代においては、否が応でもAIとの付き合い方を考えねばなりません。
このATRIという作品は「普通の恋愛」というテーマから脱却し、「AIとの向き合い方」という大きなテーマに挑戦している。しかし、アトリを「かわいさ」に極振りしているため、それが分かりづらくなっていると思うのです。
とはいえ、この作品は「AIは恋をするのか」という問題に対しては明確な答えを提示してくれていると感じます。
未来を諦めない
やはり私は、「未来を諦めない」ということがこの作品の主題だと思います。
多くの挫折をし、自分の夢を半ば諦めた状態で主人公は島へやってきます。
当初はかなり悲観的な彼でしたが、アトリ、そして学校の同級生、島の人々との交流を経て次第に変わっていきます。
トラウマを抱えながらも、過去と向き合い前を向いていく姿、そしてその先の未来を見据えていきます。
穏やかな滅びの中でも、未来を諦めず、抗い続ける人間の本質がこの作品では描写されているように思います。
最後に
総評
いつにも増して批判的な意見が多いですが、個人の見解なのでご了承頂きたい。
「終末世界」「人類の未来」「主人公の成長」「アンドロイドと人間の交流」というテーマ自体はすごく好きなのですが、半端に恋愛要素が加わったことで、魅力が半減してしまったように感じます。
同じようなテーマ性を持った「終のステラ」という作品については、非常に高く評価しています。二者の決定的な違いは親愛を描いているか恋愛を描いているか。これは作品自体の問題というより、「アンドロイドと人間の恋愛」を好まない私との相性による問題でしょう。
とはいえ、アトリが可愛いと思うならそれだけでやる価値はあるし、「アンドロイドと人間の恋愛」というものがハマれば、ATRIに私以上に高い評価をつけるのも当然かと思います。
- アトリが可愛いと思う人
- SF・友情ドラマが好きな人
- アンドロイドと人間の恋愛が許容できる人
- 恋愛要素にあまり期待しない人
以上の方はATRIを十分楽しめると思います。
体験版も出ているので、まずはそちらから。
はしがき
筆者個人の思想が原因で批判的意見が目立ちますが、高い評価を受けている名作であることは確かです。
アニメを見て興味を持った方も、そうでない方も、後悔はしないと思います。
余談ですが、以前の投稿記事(すかすかのレビュー)
から常体ではなく敬体を使っていることにお気づきでしょうか。
このほうが柔らかい印象の文章を書けると思いまして。
書きたいこと、いろいろありますが、それは日記に譲ります。
過去が如何に苦痛でも、現在が如何に過酷でも、それでも未来を諦めない。そんな強い意志を
それでは!
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