―――おとぎ話は、ひとつじゃない。
一般に優れた、だとか、ためになった、だとか、影響を受けた、だとか言えるノベルゲームは数多ある。ゆえに一つには絞れない。決められない。
けれども、「一番好きなノベルゲーは?」と問われれば、すくなくとも現時点においては、やはりこの作品を挙げてしまう。
2019年に解散したminoriというブランドの遺物でありオーパーツたるef、「ここがいい」という魅力をお伝えするよりもまず先に、私の「大好き」という思いを、ただただこの記事に書き留める。
※直接なネタバレは極力避けていますが、挿入画像で人によってはネタバレと感じてしまう可能性も捨てきれません。また、引用画像の権利はすべて当該の権利者様に帰属致します。
概要

efとは、2006年にminoriから発売された「ef – the first tale.」を出発点としたノベルゲームの総称である。
本編であるef – the first tale.とef – the latter tale.に加えて、ファンディスクである天使の日曜日が存在している。
the first taleで20時間、the latter taleも20時間、天使の日曜日で10時間弱といった感じで、全部合わせてフルプライスくらいの量がある。

天使の日曜日は、ファンディスクとして完璧なものだと思うので、ぜひやってほしいです…
アニメをよくご覧になる方であれば、「ef」と聞いたときにアニメの方を想像されるであろう。
アニメ版のefは、個人的にはシャフトの最高傑作だと思っている。

なお、聖地はドイツらしい。行きたいンゴねぇ。(国際学会とかでタダで行かせてくんねぇかな…)
どれを買えば?

まず第一に、PC版のほか、家庭用ゲーム機用が用意されている。
efという作品は、シナリオの都合上、18禁ゲーであることが非常に生きてくるから、是非PC版を購入してほしい。(未成年は大人しく勉強してクレメンス。)
PC版には、ダウンロード版とパッケージ版が存在している。
パッケージ版についてなのだが、the first taleのインストールにパッチを当てる必要がある上、パッチの配布ページが死んでいるため公式からパッチをダウンロードできないというあまりに大きすぎる問題点を抱えている。
私はパッケージ版を購入したのだが、インストールできずに手間取った。

ネット上にパッチが転がっているようですが、著作権的に怪しいので充てるなら自己責任でお願いします…

上記の理由から、ダウンロード版をおすすめしたいところではあるが、パーケージの出来が数あるノベルゲーの中でもダントツなので、金銭的に余裕があるなら両方買っていただきたい所存。

the latter taleのほうのパッケージ版は普通にインストールできたので、パケ版をとりあえず買って、どうしてもインストールできない方をDL版で追加購入するのが良さそう。
余談だが、天使の日曜日に関してはDL版が見つからなかった。
作品構成

minoriのお家芸である「インタラクティブ・ノベル」方式を取り入れており、主人公=プレイヤーというギャルゲに多い方式ではなく、プレイヤーはあくまで第三者として物語を見守るという、群像劇の色が濃い。

efの群像劇という魅せ方は、ギャルゲよりもアニメ寄りの表現方法だと思う。だからアニメ版も大成功したのかなぁと…
本編は主に四つの章からなり、各々異なる主人公によって物語が紡がれていく。
各章は、一見独立しているかのように思えるが、物語終盤において、ある一つの結末へと向かっていく。

公式サイトの「イントロダクション」がかなり良いので、そちらを参考にしてほしい。
魅力、そして大好きという思い。

2006年とは思えない、圧倒的映像美
efに限らず、minori作品の多くに言えることだが、映像が凄まじい。単なるノベルゲーと一括りにしてはもったいないくらいの映像美である。
ガチでありえないオープニングムービー。ほんとに2006年?
まずはOPの凄まじさ。
サビのところの視点移動とかガチで意味がわからない。頭おかしいんじゃないの?(褒め言葉)
新海誠監督が当時はminoriのオープニングムービーに関わっていたらしい。
なるほど、言われてみると、秒速5センチメートルや雲のむこう 約束の場所と通じるところがあるような…

minoriはOPにありえないくらいの人的資源と資金を投じた結果、会社が傾いていったそうです。予後を消費しないと作れない作品が確かにあるんやね…
なんかキャラクターが「生きて」るんだけど…

画像では伝わらないだろうが、この作品、立ち絵なりCGなり、キャラクターの目や口が動くのである。
ノベルゲーの映像表現は、よく「紙芝居」と形容されるがとんでもない、この作品が描くキャラクターは、紙芝居の中なんかではなく、そこにいる、等身大の「生きた」キャラクターである。
CGの数が異常

普通、ギャルゲは背景+立ち絵が基本だと思われるが、ef(というかminori作品)は、体感「CGのほうが多いんじゃないか?」というくらいCGの数が多い。
ただでさえクオリティが高いCG(しっかりキャラが動く)が、ありえないほど用意されている。
このCGの多さゆえの群像劇的な演出が、ef、もといminori作品の大きな魅力なんだろうと思う。
ゲームもアニメも、二度美味しい

冒頭で述べたが、efはシャフトによってアニメ化されている。
私は常々、「ノベルゲーをアニメ化するのは難しい」と述べているが、efに至ってはその限りではない。
アニメ化の成功が、efそのものがもつ群像劇的に性質にあるのか、はたまたシャフトという制作会社の巧みさにあるのかはわからない、いや、その両方であろう―――が、とにかくアニメの出来も非常に良い。
同時期にやっていたCLANNADのの影響もあり、知名度こそやや低いものの、見て損は絶対しない出来栄えである。

一説によると、当時は光のCLANNAD、闇のefと呼ばれていたらしい。

アニメとゲームでは、表現方法も異なる上、シナリオも若干異なっているので、どちらかをすでに履修していたとしても、両方楽しめる設計となっている。

個人的には、原作のゲームをやったあとにアニメを見るという順番をおすすめしたい。
the latter taleからの加速度が異常

前編であるthe first taleは、割とよくある普通の恋愛系の話で、思春期であれば誰もが抱いてしまうような感情をありありと描いていた。
前編の序盤で、雨宮優子という女性と火村夕という男性が登場するのだが、前編においては物語に深く関わることなく、終始不思議なキャラとして描かれる。
ところが、後編のthe latter taleに入ると、二人が物語に大きく関わってくるだけではなく、これまでの主人公との関係性が、あるいは各章の大きなつながりが次第に明らかになっていく。

すべての章が、一見独立しているようにみえて、実は深いところで密接に結びついている。こういうギャルゲってあんまりない。こういうところが「インタラクティブ・ノベル」であり、「群像劇」と形容される所以なんだと思う。

後編の内容も、前編とはうってかわって、病気を持つ少女だったり、過去と現在に深いトラウマがある少女だったりと、かなり陰鬱なものへの変化する。
後編は、恋愛というよりも生きる意味と言った、哲学的主題を感じられ、ブチ刺さりした。
後編、とくに雨宮優子編は、面白すぎて、読む手を止められなかった。
優子さんがありえないくらい尊い

前編では物語にちょこっと出てくるお姉さん、そして後編ではあらゆる物語の起点、そして終点的存在として登場する雨宮優子(以下優子さん)であるが、あまりにも尊い。
ビジュアルはもとより、声、話し方、性格に至るまで完璧である。
そして何より、シナリオがいい。薄幸の美少女といった感じで、読後感というか、余韻というかは、あらゆるノベルゲーのシナリオの中でも、優子サン√が私的ナンバーワンである。
ネタバレ防止のため詳細は語るべくもないが、鬱要素も相まって、とにかく終始「優子さあああああああん」と叫び散らかしていた。

優子サンと夕クンの関係性がほんとに尊いんですよ…
安易なご都合主義じゃない

この作品のテーマは「おとなのおとぎ話」である。
おとぎ話は、いつもハッピーエンドとは限らない。とりわけ「おとなの」おとぎ話に関しては。
ハッピーエンドというのも確かにいいだろう。
けれども、ハッピーエンドばかりのおとぎ話は、時として毒となってしまう。共感できなくなってしまう。
efのような、鬱シーンがありつつも、どこか優しさがあるようなそんな作品に救われる人もいる。
後編、特に優子サン√は鬱シーンが確かに多い。大団円的な、ハッピーエンドではないかもしれない。それでもなお、efからはどこか包み込むような、そんな優しさを感じてしまうのは、果たして私だけなのだろうか…
FDとして最高の出来栄えである「天使の日曜日」

efシリーズには、ファンディスクが存在する。それが、「天使の日曜日」である。
FDは、基本ファンディスクという名の通り、本編ををやった人が、任意にプレイするのが基本であるが、殊天使の日曜日に関しては、準本編と言っていいくらいには必須級のFDだと思う。
FDは、FDらしく、鬱要素がほぼなく、終始平和な感じで進んでいく。
本編をプレイされた方であれば、誰しもが抱く感情だと思うが、ef本編は物語の終わり方としてはもちろんこの上ないものだが、またもう一つの世界、あるいはおとぎ話が見たいというのが正直な感想であろう。
そんなプレイヤーの思いにほぼ完璧な形で応えたのが天使の日曜日だと感じている。
FDには、本編の後日談のほかに、あったかもしれない”if”の物語が収録されている。
特に優子さんと夕くんの物語に関しては、本編が鬱シーン多めだったことも相まって、平和な二人の日常に、マジで涙が止まらない。

ふとした日常回に落涙するのは、私だけなのでしょうか。
強いて欠点を挙げるとするならば、優子さんのお話を最後に持ってくるとともに、優子さんと夕くんの何気ない日常をもっともっと描いてほしかったというくらい。
いやほんと、天使の日曜日は私の「こういうの求めてたんだよ」に見事に合致してきたので、みなさんもどうせefをやるなら、天使の日曜日も同時購入したほうがいいですよほんと…
最後に

efには鬱シーンが確かに多い。
それでも、なお、そこには優しさが伴っているように感じられた。
その優しさこそが、受け継がれていく音羽の屋上の鍵に代表されるような、「人の思い」の繋がりなんじゃないかと思う。
FD含め、毎日をちょっとでも丁寧に生きよう、そう思わせてくれる作品だったように思う。
普段シナリオを評価するうえで、私はシナリオの整合性だったり、伏線の貼り方だったり、含蓄だったりをかなり重視する。
けれども、そういったものを完全に無視してなお、私は「お話」としてefが大好きである。
―――efという作品にまずは「ありがとう」という感謝を。そして、「大好き」という想いをただただ伝えたい。